北直人個展『TOTEM』
12月13日(火)〜12月18日(日)10:00~17:30
埼玉県立近代美術館 B1F 一般展示室3
展覧会名TOTEMには二つの意味が込められています。
ひとつは私に関することです。私は元々は様々なことを諦めようとしていた時期に、思わぬきっかけで絵を描くようになり、今まで生きています。制作した作品を他者に見せ、アートが何であるのか探るために勉強をし、「パリのギャラリーでどのような現代アートの作品が展示されているのか見たい」との想いから、ほんの少しではありますが、英会話とフランス語を学び、パリ市内で配布されているparis gallery mapに掲載されているギャラリーを一ヶ月かけてしらみつぶしにまわったこともあります。また、現在では勉強や学びのために人文学に関連する団体でボランティアもしています。これらは語るほどもないような小さな経験かもしれませんが、私にとっては非常に大きな出来事で、その渦中にいます。それらのことを考えると、私の作る作品と制作の向かう方向が、社会の中での私を規定し、周囲の人を傷つけたりしない形で、生かし続ける作用を与えてくれているように感じています。
二点目は、先ほどと同じ構造ではあるものの視点を大きくとったものです。社会の中で人の造り出したアートが私たちを規定しているのではないか、ということです。作品の価値、神聖さを帯びたアーティスト・キュレーター、自己表現、創造すること。アートは、これらの物や人・行為に初めから特別な属性があったかのような振る舞いを私たちに強要します。アートに関する物や行為に付与されている属性は、特定の人に付与された価値から派生されたものも多く、その"人"であったとしても、私にはそれぞれの違う要素が違う場所を占めているだけという点で等価のように思います。これは私たちがお金と強く結び付いていることもあり、先ほどよりも複雑に思えます(アートという言葉がいまだに多義的というのもあるかと思います)。
これら二つの意味が、作品の制作中に頭の中に浮かんでくることが多く、自分の制作しているものが「なんだかトーテムのようだな」との思いから、展覧会名をTOTEMとさせていただきました。ご高覧いただければ幸いです。